木造建築の耐震性
木造建築と聞くと耐震的に弱いと思う人が多いだろう。それは、1995年「阪神・淡路大震災」にて被害が一番多かったものが木造建築である。木造建築=耐震性に疑問と思う人が増えたと思う。ここでは、そんな不安を少しでも解消、取り除ければと思い考えて見ました。木造建築の耐震性が、どのような方法で設計者がやっているかなど、ユーザーの方があまり気が付かないことを書いてみようと思いました。
「阪神・淡路大震災」にて倒壊した建物は、木造の在来構法(軸組構法)で、築後年代がたち建物の老朽化や構造的にも構法自体が古く耐震性に乏しい建物が倒壊している。又、新しい(築後数ヶ月)在来構法(軸組構法)についても一部では倒壊にいたってます。その他、ツーバイフォー構法やプレファブ構法といった建物は被害が少なかった。これらの情報は、当時のメディアで報道していたことだ。なぜ、古い在来構法(軸組構法)が倒壊したかと言うことに付いて推測すると以下の2点の内容が加わったからこそ倒壊という結果になってしまったと思う。
@構法が古く耐震性がなかった。
A老朽化していた為に耐震性がなかった。
@とAが加わったからこそ、ここまでの被害になり、その為に多くの犠牲者をだした結果になったと思う。どちらか一方では、ここまでの被害はなかったのではないか、という疑問を常に感じていました。単に古いからではなく、耐震性がないからでもないと言うことを理解して頂きたいと思っています。又、新しい(築後数ヶ月)在来構法(軸組構法)については、壁(耐力壁)が非常に少ないか、かたよった配置がされていた。と言うことがあげられると思います。
上記3点については、現在の法律と照らしても格段と法改正が行われ、より厳しい内容に変わっています。その点は理解して頂きたい事項だと思います。又、ツーバイフォー構法やプレファブ構法といった建物に関し、現に倒壊しなかったということは信頼性があるということも、認めなくてはいけないと思っています。
それでは、在来構法(軸組構法)における一般的な構造計算について、どの様にして構造計算をしているか説明していきたいと思います。規模によりますが平屋や木造2階建ての構造では、建築基準法施行令にある軸組計算というものを使い求めていきます。それは、地震力と風圧力に対し建物の壁(耐力壁)が外力を受けた時、壁が耐力を受けて防ぐ方法と理解して頂きたいと思います。地震力については、床面積に屋根の仕上げに対する係数を掛けて求めることにより、必要な壁(耐力壁)の長さがでます。風圧力は、壁の見付面積(桁行方向と梁間方向)に係数を掛けて求めることにより必要な壁(耐力壁)の長さがでます。両者を求め、比較して厳しい数字が耐力壁の必要長さになります。あくまでも、これは簡単なやり方であると私は思っています。ただ、簡単な方法だけに現在の木造建築に普及し現代の構造強度に貢献したとも思っています。しかし、軸組計算は、あくまで簡単な計算ですので私は、木造建築とはいえ鉄骨造や鉄筋コンクリート造で使う構造計算をお勧めしたいと思ってます。より安全に住めるということ、やはり人命が掛かっているというのが一番の理由です。するべきことをすると木造建築も安全になると言うことは事実なのですから、ユーザーの方も少しは考え方を変えてみてはいかがでしょうか。
木造建築の構造計算は上記の方法で行われているのが現状です。今回は、細かい数字(係数)に関しては記載しませんでしたが計算方法など理解して頂けたかと思います。又、構造計算の仕方次第により設計上強度が得られれば、安心して木造でも強度が得られると言うことも理解して頂けたかと思うのですがいかがでしょうか。最近では、東海地震が起きるのでは、と騒がれていますので設計者、ユーザー共に、もう一度地震対策を含め、根本から考え直してみてはと思っています。
※阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震)
1995(平成7)年1月17日5時46分、淡路島北部の北緯34度36分、東経135度02分、深さ16kmを震源とするマグニチュード7.2の地震が発生。
<人的被害の概要>
この災害による人的被害は、死者6,432名(いわゆる関連死910名を含む)、行方不明者3名、負傷者43,792名という戦後最悪の極めて深刻な被害をもたらした。(自治省消防庁調べ、平成12年1月11日現在)
都道府県別にみると、兵庫県に死者の99%が集中している。
<施設関係等被害の概要>
住家については、全壊が約10万5千棟,半壊が約14万4千棟にものぼった。
交通関係については、港湾関係で埠頭の沈下等、鉄道関係で山陽新幹線の高架橋等の倒壊・落橋による不通を含むJR西日本等合計13社において不通、道路関係で地震発生直後、高速自動車国道、阪神高速道路等の27路線36区間について通行止めになるなどの被害が発生した。
ライフライン関係では、水道で約123万戸の断水、下水道で8処理場の処理能力に影響が生じ、工業用水道で最大時で289社の受水企業の断水、地震直後の約260万戸の停電、都市ガスは大阪ガス(株)管内で約86万戸の供給停止、加入電話は、交換設備の障害により約29万、家屋の倒壊、ケーブルの焼失等によって約19万3千件の障害が発生するなどの被害が生じた。
公共土木施設関係では、直轄管理河川で4河川の堤防や護岸等に32箇所の被害、府県・市町村管理河川で堤防の沈下、亀裂等の被害、西宮市の仁川百合野町において地すべりにより34名の犠牲者が生じるなどの被害が発生した。
農林水産業関係の被害については、農地、ため池等の農業用施設など各施設において甚大な被害が発生し、その被害総額は900億円程度であった。(自治省消防庁震災対策指導室 阪神・淡路大震災について(第104報)より抜粋)
以上
2002.02.05
writing by dai−k